鋼の翼 鉄のエラ

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金属の話。ちょっと前に書いたエイリアンの補完記事を書いてみよう。あのエイリアンの表皮の、というか、ギーガーの画風である、金属的な質感、金属をまとった生物、その魅力。

なぜ、金属的であることに、こんなにも興味を惹かれるのか。

今更だけど、気にしてみると、金属というのは、まあ色んな場所で加工されて生活、文明に融け込んでいる。

ガードレール、電線、トタン屋根、シャッター、スプーン、フェンス、銀歯、自転車、信号機、歩道橋。

パッと見えるだけで、ものすごい量の金属が、利用され、消費されている。

こうやって、見過ごしているもの、気にも止まらないもの、当然だと思っていること、そんなものに、何か自分に足りないもの、見るべきもの、省みてみるべきものが、潜んでいるに違いない。考えてみよう。

人間の変形能力

金属の加工が始まったのは、遥か昔のことらしい。青銅器、鉄器、こういうものは、実用的価値よりも、鑑賞、研究の、文化的価値が付いてしまう程に古い。それぐらい、太古から人間は金属を利用してきた。

量の豊富さ、硬さ、見た目、人間の熱い興味を引くには、十分なだけの要素を持っている。たくさんの国で、硬貨にもなっている。

ここで気になるのは、人間の加工力、変形能力だ。

人間は、あらゆるものを変形させてきた。石、木、生物、植物、山、そしてこの惑星さえも、変形させる能力を持っている。両手と道具で、あるいは顕微鏡と試験管で、ありとあらゆるものの形を組み替えてきた。金属もまた、人間の変形能力の的になった、一つの対象だ。

具体的に考えても、抽象的に考えても、ある、2つのものが衝突した場合、より柔らかいものの方が変形することになる。金属は、地盤から取り出され、精製を経て、利器に変わった。人間の変形能力の勝ちだ。金属の方が柔らかかった。

僕の思う、金属の最も象徴的な利用というのは、武器・兵器だ。刀、銃、戦車。金属がもたらした人間の暴力の加速は、目眩がするほどのものだ。兵器は恐ろしい。それも、人間の加工力ゆえだ。金属の柔らかさゆえだ。それでも、人体と金属では金属が勝つ。人間が勝ったからだ。

金属は、柔らかいが故に、人を、国を、裂いてきたと言える。

弾丸が作られる。弾丸は、人体を破壊する。文明を変形させる。

全ての弾丸は、金属へと放たれた、人間の変形能力の跳弾だと言える。

金属の抑圧性

金属の利用。檻と囚人、弾丸とこめかみ、錠と奴隷、刀と首。金属が抑圧してきた、人間の意思、理想、夢、文化。それは、大変なものだろうと思う。抑え込み、縛り付ける、文明の、人類の檻。それが、金属というもの。重く硬い性質が、幽閉の道具として、高い効力を持った。

前の時代の大戦も、色んな見方が可能だろうけど、僕は、金属の性質が最もよく現れていた出来事だろうと思う。

人類が(少なくとも善良な人々の間で)、金属アレルギー(武器・兵器への忌避感情)を発症した今では、戦争未経験者の僕でさえ、強い抗体を持っている。発砲の光、手榴弾の音、ミサイルの熱。どれも、未経験のまま、恐ろしい。

なんだか、金属の恐ろしさばかり書いてしまっている…。文明への憎悪がハンパない笑。

これではダメだ。なにかを信じ込むために書いているんじゃない。意見を固めるために、書いてるんじゃない。自分の中の幻想を、破壊するために書くんだ。

金属の特質

さて、金属の特質とはなんだろう?金属でなければならないこと。金属以外の物質では、叶わないこと。

刃?いや、石器時代から、石のナイフがあった。プラスチックの包丁もある。薄く、鋭くしていくだけなら、他の素材でも、不可能じゃない。

壁やガードレールなんかの仕切り?いやいや、煉瓦積みの壁、木造住宅の屋根、色々ある。ベルリンを分断していたのは、石の壁だ。

釘やネジなんかの連結具?展延性のない木や石は、繊細な加工は難しいはず…。いや、でも、なくはないな。

乗り物…?車…?バス…?いや、作れないことはないか…?

スペースシャトル?海底探査機?

そうだ!これだ!

鋼の翼 鉄のエラ

つまり、そういうことだ。宇宙空間や、強い水圧のかかる、人間の行くことのできない環境、決して訪れることができなかったはずの場所へ、金属は、その性質によって、人間必死の環境から隔離することによって、未知の場所へ、行くことができないと、天に定められていた場所に、訪れることができる。

深海、真空、そんな、生存不能の状況の中に、生存環境を密閉した箱の中に乗って、飛び込んでいける。

この、冷たく硬い、抑圧、停止の、象徴であるように思われる物質の本分は、人間を遥か彼方まで連れていく、翼やエラになりうるということだった。拘束具でもあり、解放具でもある。それが、金属というものだ。

幽閉、密閉の力によって、人間をどこまでも解放していく。

人類の、文明的運動能力を高めたと言ってもいい。

冷たく硬い外見の裏に、高い運動性を秘めるこの金属というもの。

これが、宇宙生物、高い運動能力を持つエイリアンの表皮になったのは、ある種必然だったのかもしれない。

ギーガーが描いた、金属を纏った生き物達。

まだまだ、人型クリーチャーの魅力は尽きない。エイリアンのことも、分からない。分からないことばっかりだ。

思えば、何も、考えずに生きてきた。考えることによって、進むことによって、自分の精神、思考というものが、いかに手抜きで作られていたか、ということがわかる。

それでも、ともかく一つ、魅力に迫れた。自分の力で。

やっていくしかない。

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